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ファミリーボクシング ファミリーボクシング
ナムコ
1987.6.19発売
©1987 NAMCO

がむしゃらなファイトの欲求に応えてくれた

 映画『ロッキー』シリーズのおかげで、子どもの頃からボクシングが好きだった。とはいえ、現実の試合では、映画のように豪快にパンチを打ち合ったりしないし、多くの場合、勝負は、効いたかどうか解らないような一瞬の一撃で決まってしまう。

 ボクシングに限らず、格闘というものは技術が極まるにつれて、概してそうなるもの。だとしても、それはすこし呆気なくてつまらないな、と子供心に感じていた。

 ボクシングには憧れていたけど、現実にボクシングがしたいわけでは無論なかった。要するに『ロッキー』のような手に汗握る劇的でがむしゃらなファイトが見たかったのだ。その欲求にいち早く、正確に応えてくれたのが、この『ファミリーボクシング』だった。

 攻と防のふたつのボタンだけの単純な操作で、隙あらば打って打って打ちまくる。必殺ブローで気分良く勝てれば満足だし、たとえ勝てても気分が良くならなければ負けも同じ。

 逆に、相手のアッパーカットで場外に吹っ飛ばされた時や、体力が一気にMINになるくらい見事なカウンターをもらって負けても、気分が良ければそれでいい。別にストーリーなんかないから、勝ちに拘る必要なんかまったくないのだ。

 数年後、『ストリートファイターII』から『バーチャファイター』に連なる格闘ゲームの一大ブームが起きて、ゲーム自体のクオリティも、プレイヤーたちの技術も爆発的に向上した。だが、私はその興奮の波に乗り切れなかった。ゲームもプレイヤーたちもハイレベルで、試合は見事なものだけど、心のどこかに子どもの頃に感じたあの感覚を思い出して敬遠していた。

 もう『ロッキー』も観なくなり、格闘ゲームも複雑すぎて遊べなくなった今でも、この『ファミリーボクシング』だけは折にふれて遊ぶことがある。単純な操作、がむしゃらなファイトが許された時代の、まるで忘れ形見のようないとおしいゲームのように今は思う。

寄稿:芦原 男 1976年生 会社員


必殺パンチをかわしてのボディブローが効く!

 買ってすぐのころは、バカみたいにパンチを出していました。5発殴られたら6発殴る、という気持ちで。そして、インターバルは、シュウォッチで鍛えた連射でものすごいスピードで回復できたので、私は強いと思っていました。

 しかーし、そんなにバカみたいにパンチを出さなくても勝てますよね。相手の、かっとびストレートでしたか、すっとびストレートでしたか、名前は忘れましたが、ストレートの必殺パンチにタイミングを合わせてボディブローを決めると、信じられないくらいダメージを与えられるんですよね。これが決まったときは、超快感だったのを今でも覚えています。

寄稿:たれほそ 男 1975年生 埼玉育ち 会社員


磨耗するツメ、へたれるボタン

 ゴングとともに始まる、低音で一本調子のBGM。パンチが炸裂するごとに発する、「バシュ、バシュ」というにぶい音。ゲーム開始当初は、ガード(Bボタン)はいらぬ、Aボタン連打連打、ノーガードで勝てたものだ。

 さらに、パンチ・フットワーク・スタミナの各要素を、ほどよく配分しながらレベルアップさせていく、RPG的要素も、スポーツゲームとしては新鮮だった。相手をロープまで飛ばす「ぶっ飛びストレート」、観客席へと飛ばす「ぶっ飛びアッパー」といった必殺技も快感だったなあ。

 それより何より、ラウンドの合間である。ABボタンを連打することで体力を回復させるわけだが、もう連打というか、こすってた。ツメで。『ハイパーオリンピック』ばりに。おかげでツメからは摩擦熱でイヤ〜なニオイ出してたし、コントローラーのボタンはほぼヘコんだまま、やがて機能不全に陥り、ほかのゲームをするのに支障が出たほどだ。

寄稿:深田 洋介 男 1975年生 東京育ち 編集者 ホームページ

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