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メトロクロス メトロクロス
ナムコ
1986.12.16発売
©1985 1986 NAMCO

アーケード版との完成度の差にガッカリ

 アーケードのオリジナルがあれだけの完成度だったのに、ファミコン版にはガッカリでした。

 蹴ったポカリが変な軌道で飛んでいくのは御愛嬌としても……、斜めに移動すると移動速度が落ちるので、縦横と移動したほうがいい所とか。取るとすべてのキャラをすり抜けられるアイテムが、スケボーなどもすり抜けてしまうとか。クラッカーが中心部のわずかな部分でしかクラッカージャンプできないので、やらないほうがいいとか。

 5秒ジャストでクリアするとボーナス得点となる余計なギミック。ジャンプしたばかりでは缶を蹴ってしまう不具合もあり、買った初日に放り投げたソフトのうちのひとつ。雑誌で発売前に見たファミコン版の写真の感じから、できがいいように見えたのもガッカリを増幅、32面をクリアして1面に戻り、売り払うことが決まりました。

寄稿:タンピンドラドラ 男 1972年生 東京育ち ゲーマー


主人公を救えなかったトラウマ

 俺が『メトロクロス』で遊んだのは、小学生の頃、親戚の家でのこと。母の好きな歌手のコンサートがあり、父は仕事で遅いので、俺と弟を親戚の家に預けて母はコンサートへ。

 親戚の兄ちゃんはゲームをたくさん持っていた。ファミコンを持っていなかった俺と弟は、兄ちゃんが友だちの家に泊まりに行って貸し切り状態なのをいいことに、狂ったように遊んだ。『スターフォース』、『迷宮組曲』、『ソロモンの鍵』……その中に『メトロクロス』が。

 障害物の施された廊下のような道をダッシュとジャンプで駆け抜けるというシンプルなゲーム。弟とかわりばんこに、夢中で駆け続けたのだが。

 几帳面な兄ちゃんは取説も保管していて、弟のプレーしている間、『メトロクロス』のバックストーリーを読んでみた。うろ覚えだが、主人公は記憶をなくした男で、気がつくとこの廊下に放り出されていて、廊下を抜ければ記憶を取り戻せるが、急がないと出口が閉ざされてしまう、みたいな感じだったと思う。

 このストーリーと、ミス時の主人公の姿を照らし合わせて、俺は怖くなった。各ステージには制限時間があり、それまでにゴールできないと画面がフラッシュして主人公は感電。残念音をバックに体と着衣の一部が黒く焦げた姿で呆然と立ちつくす男。死んでいるようには見えない。

 延々続く道の出口が失われ、取り戻せないことが確定した記憶。取り組むべきもの、向き合うものが何もないのに、殺されもしない。この男はこれからどうするんだろうか、と思った。

 疲れて寝てしまった弟を尻目に、兄ちゃんの部屋で俺は独り走り、跳び続けた。絶対に全ステージクリアしなくてはと思った。出口にたどり着いた主人公がどんな救いを享受するのか確認しなくては、不安を埋め合わせることはできないと思った。

 2時間ほどプレーしてクリアできず、時計をみると夜10時。俺のウデでは無理だ、と絶望したところに母が迎えにきた。帰りの車中、母はコンサートのテンションを引きずって鼻歌交じりの上機嫌だったが、俺は眠ったふりをしつつ陰気に悶々としていた。

 ゲーム自体は描写・演出もコミカルですごくおもしろい。それだけに設定の悲惨さが強烈に際だつ。そんなトラウマゲームでした。

寄稿:ペロタ 男 1975年生 茨城育ち 会社員


ただ走るストイックなゲーム

 このゲームはただ走っていくだけです。あまたの障害が主人公の滑走を妨げようとしますが、それを乗り越え走るだけです。

 別にゴールしたからどうとか、目的とかありません。これはそんなストイックなゲームなんです。高得点をひたすら目指す、それのみが唯一にして最大の目的です。

 でも、プレーしていた時の自分は真剣以外の何者でもなかったです。あの熱中とあの時代は返らないんだなぁ、とリメークが入った「ナムコミュージアム」を見つめて思う今日この頃でした。

寄稿:新星 男 1985年生 群馬育ち 大学生

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